ICの現場2は会員が会員を取材し掲載していまし。
Vol.14 内川 潤也さん
賃貸アパート・マンションの新築及びリフォームの企画設計・建築設計・監理全般のお仕事
■氏 名  内川 潤也(うちかわ じゅんや)
■会社名  株式会社 拓建ホーム
■業務内容 賃貸アパート・マンションの新築及びリフォームに重点を置いた、企画設計、実施設計・監理全般
■ICへの道程
 設計業務において、提案・提供物に付加価値・説得力を持たせるため、この資格の必要性を感じ、独学で取得
■座右の銘 
■好きな建物 Villa Savoye、メゾンエルメス、金沢21世紀美術館、金沢市立玉川図書館
 
インテリアコーディネーターの事例紹介

今回は、内川さんが2005年に担当した2件のマンションリフォーム物件をご紹介します。
それぞれ鉄骨造・鉄筋コンクリート構造で、躯体は築20年以上経っており、時代のニーズに合った改装が必要な状態でした。仕事の依頼は、地主又は不動産屋を通して、このように築年数が経ち入居が滞ってきた時に依頼がくるそうです。賃貸マンションというのは、当然家賃というものがあり、また不特定の人たちが出入りし、修繕を繰り返しながら、オーナーや不動産業者に利益を還元する形態であることから、リフォーム全体にかけられる予算は、そういった回収率も含め計算されます。オーナーは、できるだけリフォーム費用を抑えて利益を得たいと考えており、新しい入居者のためにわざわざ建築家やデザイナーに依頼することは少ないのです。また、リフォーム需要がある物件は、ほとんどが築10年を過ぎており、ユニットバスやキッチンなどの住宅設備、便器や温水器、エアコンなどの衛生設備類の交換は必須なので、内装にかけられる予算が更に削られ、その中でいかに時代にマッチした、しかも少しでも長持ちする仕様にするかが考え所であり、腕の見せ所でもあるようです。そして、オーナーにとっては、空き部屋の期間が短く、常に満室状態を維持できるよう、住まわれる人に、家賃に即した満足感を得てもらうための付加価値をどれだけ付けてあげることができるかで、他社との差別化を図る。一昔前はエアコン付とかフローリング張りとか、ユニットバスとかで差をつけることができたが、もはやそれらは当たり前となり、少しでも他と違う付加価値をつけないと、賃貸業界は生き残れない時代である。内装のデザインもそういった付加価値のひとつであると同時に、個々のライフスタイルの違いや変化に対応できるフレキシブルなアイデアと工夫が必要になり、とても難しくもやりがいのある分野の仕事ではないだろうか。

まずは、金沢市窪にある「ヒルトップ窪」のリフォーム物件からご紹介します。1987年新築です。

 

時代が経っても色褪せない、ヤングファミリーから30代前後がターゲットのクールモダン

外観

 

「ヒルトップ窪」
コンセプトは、時代が経っても色褪せない、
ヤングファミリーから30代前後の若者受けするクールモダンな仕様にすること。

 

 


←リフォーム前
部屋のほとんどは畳が敷き詰められ、天井は杉板の目透し天井、台所の壁はタイル貼り、照明器具も一室一灯の和風なペンダント照明、襖に障子と昭和の時代を感じさせる内装仕上げでした。






天井内のダクト配管やパイプスペースをどのように配置するか、移動できるものと、できないものがある中で図面上には出てこない部分もあり、現場に足を何度も運び、臨機応変な判断を求められることもしばしばあるとか。
特に鉄筋コンクリート構造は天井の梁とダクトが縦横無尽に交差しているので、照明計画と共に井の梁をいかに隠すか、またはどう見せるかが悩み所という。


 

二つ目の物件は金沢市にある「レジデンス泉が丘」のリフォーム物件をご紹介します。

1976年新築。
こちらの物件もコンセプトは同じく、20代から30代の単身者又は若いファミリーを対象に洗練された都会的な内装に仕上げること。

 











 

内川さんに聞きました。

■ Q:インテリアコーディネーターとして、何が一番必要だと思いますか?

A:日々の勉強です。これに限ります。

■ Q:コーディネーターになる前となった後で、何か変化はありましたか?

A:インテリアに関しても、プロとしての自覚を持って企画提案するようになりました。
  また、不勉強な部分を痛感し、補うよう努力するようになりました。

■ Q:コーディネートする時、特にどういうことを心がけていますか?

A:依頼主の意図を正確に汲み取り、最小限で最大の効果を発揮できるよう心がけています。

■ Q:今までの経験の中で、一番印象に残っていることはどんなこですか?嬉しかった、又は苦しかった思い出などを聞かせてください。

A:嬉しかったことは、最終的に満足して頂いたお客様の笑顔を見たとき、苦しい思い出と言うか仕方がないのですが、諸般の事情により思い通りの提案ができなかった時は辛いですね。

■ Q:今後の目標を聞かせてください。

A:設計やコーディネート業務で受注が出来るようになればよいのですが。

■ Q:今後、コーディネーターになろうとしている人達へメッセージ又はアドバイスをお願いします。

A:ある人に教えて貰い心に留めている二つの言葉
 どんな些細な仕事でも意識を高く持って作り上げましょうそれが業界全体の底上げに繋がります。
 建築に裏も表もありません。

 

取材を終えて

元々、設計事務所に勤めていた経験もあり、1級建築士も取得されており、設計の基本は熟知した中で、コーディネーターとしてのセンスも発揮され、どちらの物件も外観からは想像もつかないモダンな内装に仕上がっていました。
時代の移り変わりは速く、流行りすたりはつきもので、その中でも飽きのこないシンプルでありながら斬新なデザインを心がけている内川さん。
設備や窓、梁型や柱型など、どうしても動かすことのできない条件がつき物の中で、見た目だけでははなく、使い勝手や機能、動線計画に至るまでトータルで考え、狭い部屋をいかに広く快適な空間に造りかえるか、常にインテリアのトレンドに情報のアンテナを張り、日々スキルアップに努めている内川さんでした。そして、何の変哲もない年数の経ったマンションやアパートの一室を見事に生まれ変わらせ、デザイナーズリフォームマンションとして借り手の需要を増やすことができれば、賃貸物件をコーディネーターに依頼する良さがもっとオーナーにも理解され、こういった質の高い部屋が増えていくのだと感じました。内川さんはその一人者として、これからも飛躍していくことでしょう。

今回の取材にあたり、快く現場撮影を承諾してくれた関係者の皆様、そして取材協力のため資料等も提供してくださり、誠にありがとうございました。

● 取材:掛野俊介 木和田里美

 

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