プロもうなる新しい発見。幅広く活躍されているインテリアコーディネーターの現場を取材しました。
Vol.10 後藤 真実子さん
金沢市内のK様邸新築工事のインテリアコーディネート例をご紹介します



◎プロフィール
■氏名 後藤 真実子

■会社名 マークス (フリーランス)

■業務内容
照明メーカーでのICとして、マンションのモデルルームのプランニング、セッティングから、実際にマンションを購入されたお客さま各々のコーディネートプランの作成までを請負う。また、戸建住宅のコーディネート(照明・家具・カーテン・床壁天井材の選定)も行っている。

■ICへの道程
初めは、当時習っていた華道の伝統的な花の飾り方が、今の日本の家では、どうもしっくりこないような気がして、ふさわしい空間って何だろうと、インテリアに興味を持ったのがきっかけとか。勉強を始めてみて、インテリアとは、生活全般に関わる奥の深い物なのだと分り、ついに仕事にするまでに至ったそうです。

■趣味 ジムで汗を流すこと。ヨガ。

■座右の銘 何ごとも誠実に


◎インテリアコ−ディネ−ト事例紹介。
(金沢市内のK様邸新築工事のインテリアコーディネート例をご紹介します)

■お客様データ
40代のお施主様(漫画家)とお母様と猫が暮らす住宅兼アトリエ。
コンセプトは女3人(本当は2人と1匹)が心地よく安心して暮らせる家。

金沢市内の閑静な住宅街にあるK邸。
取材班がお邪魔したのは、完成から3ヶ月余りたったある春の日の夜でした。
お仕事でお疲れのところにも関わらず、笑顔で迎えてくださったKさんと後藤さん。
ありがとうございます。


お施主様(左)と後藤さん(右)
おふたりは小学校の同級生で、数十年来のお友達同士です。イスの下には猫のつむぎちゃん。


エントランスからポーチへ入る引違い戸。木とアクリルでできており、軽くて開閉がスムーズでアクリルから透けて見える中の光が、訪れる人に安心感を与えてくれる。

和の薫り漂う玄関ポーチ
壁は土壁にひび割れを発生させたままの仕上、腰壁はタイル貼りで土の自然なままの素朴な表情と草の模様が散りばめられたグレーのタイルの組み合わせが、どこか上品さも感じさせます。
 土壁に掲げられた木製の表札
K様邸は、天然木がふんだんに使われたお宅で、貼り玄関ドアからすでに、木製です。下部は銅板j貼り。
鋳物のレバーハンドルと木の建具がとてもマッチしています。
腰壁は名古屋モザイク工業(株)の「ルナーレ」300角タイル
   
 玄関ホールから真っ直ぐ伸びた廊下の先に、朱色の額が目に飛び込んでくる。そして、天井に1箇所も照明器具を配しておらず、壁のブラケット照明だけで明るさを演出しています。                   サッシも、木製。羽咋の「森の窓(株)」製品です。
http://www2.nsknet.or.jp/~morimado/index.html
   
家の中に一歩足を踏み入れると、とても穏やかな空気を感じました。
床は、チークの無垢フローリング、階段はケヤキで、壁はしっくい塗です。
ローズウッドの花台には、この空間にぴったりのお花が...。
Kさんが、この家での暮らしを豊かに楽しんでいらっしゃる様子がうかがえます。
この花台の扉に貼ってある紙や、奥の壁に絵のように掛けられているのは、京都の老舗「唐長」さんの唐紙です。http://www.karacho.co.jp/ 後藤さんとお施主様は、一緒に京都まで足を運び、お店でいろいろと相談しながら、この唐紙を選んだそうです。
   

ダイニングの家具は、後藤さんがトータルで提案されました。ダイニングチェアは、ハンスJウェグナー(デンマーク)、スツールはアルヴァ・アアルト(フィンランド)のデザイン。北欧テイストとモダンな和風の感じが、しっくりと溶け合っています。造作家具のテーブルはくるみ材です。 廊下からダイニングへ入る片引き戸ゆらぎ模様のガラスと飴色の格子の組み合わせ。
独特の透明感がダイニングの様子を柔らかく映し出しています。このガラスはステンドグラスの一種でほのかに黄色味がかっていました。
珪藻土の和室。「和室」と呼んでよいのかわからないが、床の間の上が吹き抜けになっている一風変わった造りになっている。屋根の勾配のままに天井の勾配をとり、しかも梁をそのまま化粧梁として見せ、天井が高く、とても開放的な和室でした。天井から吊り下げられたペンダント照明は後藤さんセレクトのもの。
床板はヒノキ。
掛け軸と床飾り、そして生け花が見事に調和しています。お施主様のセンスの良さも感じられます。                         
襖を閉めた時の様子。
欄間部分からダイニングの明かりが照らし出されます。腰紙も桟木のピッチに合わせ上下で色分けされた洒落た演出。
和室におかれた製作座卓(くるみ材) 左右で模様が違います。
設計士さんの遊び心のある造りになっていました。
和室の隅におかれた衝立にも京都の唐紙が貼られていました。
   
部屋のあちこちには、Kさんが気に入って少しずつ買い集めているというジュリアン・ウィリアムス(イギリス)の絵が。このモノトーンの絵が、部屋のイメージを全体的にまとめているように思いました。 2階のアトリエスペースにはたくさんの絵が飾られています。
   
ご家族の一員。猫の「つむぎちゃん」にとっても、木の家は心地よさそうです。ダイナッミクな柱と梁で構成されているため、猫にとっては格好の遊び場。 見つめられて、ちょっとドキドキしました。
つむぎちゃんのベッド
   
灯油でパネルの中の温水を温める「HR暖房システム」が家全体に使われていて、どこにいても、ほんわかと暖かです。                   
将来のことを考えて、これもバリアフリーの一環として採用されたそうです。ベッドは桜材です。
玄関脇にもパネルヒーティングが設置。 冬場にコートをかけておけば、急に出かける時でもいつでもぽかぽか
   
そして和室にもパネルヒーティングが!薄くて、しかもシンプルなデザインのため、どこに設置してもさほど違和感が感じられませんでした。
   

アシスタントの方の仮眠室にも、ちょっとした遊び心が。Kさんが使わなくなった着物の帯を襖のアクセントにリサイクル。

こちらは着物の反物。↓

   
廊下の物入の襖の引き手にも、先程から随所に使われている唐紙が貼られていました。
柿渋色の草模様と胴の色をした引き手が、玄関のコーディネートにも似て、遊び心の中にも、洗練されたコーディネート術が冴えわたっています。
   
こちらはアトリエ横の小部屋。ここの扉にもアクセントに唐紙が貼られていました。ここでも統一性をもたせています。 和室にある衝立と同じ模様。
   
疲れたらアトリエ横のシアタールームで休憩。
オーディオ設置専門業者によるアンティフォンさんの設計で、臨場感あふれる映画が楽しめる。
ここでは一時仕事を忘れて、煮詰まった頭をからっぽさせてくれます。
   
Kさんのお仕事場。開放的な空間で天然素材に囲まれていると、自然に良いアイディアも浮かびそうです。
木としっくいというとにかく自然材料にこだわった設計士の元で、後藤さんも唐紙を巧みに使用し、模様を草柄にして、あくまで自然のイメージを崩さず、お施主様の要望にもきちんと応え、コーディネートされた空間造りはさすがでした。

 

 

 ・・そして今日も夜遅くまで、
  快適な空間で仕事に励むKさんでした。


■後藤さんに聞きました

1)インテリアコーディネーターとして何が一番必要だと思いますか?
日々の生活のすべてのこと(住はもちろん、衣、食も含めて)に対する好奇心と情報収納力。

2)コーディネータになる前となった後で、何か変化はありましたか?
どこに行ってもつい照明、家具、カーテン等のメーカーをチェックしてしまいます。


3)コーディネートする時、特にどういうことを心がけていますか?
まずお客さまとのコミュニケーションで、お客さまのライフスタイル、趣味・嗜好を知り、その上でコーディネートを        すること。またお客さまにとって最適なアイテムをご紹介するための人と人のコーディネート(出会い)を大切にすること

4)最近のお客様の傾向を教えてください。(カーテン、クロス、家具など)お客様に人気のもの、またあなたが注目しているものはありまますか?
暮らしの中で毎日触れ、使うものなので、素材のいいもの、気持ちのいいものが好まれています。個人的にはやはり自然素材。しっくい、珪藻土、無垢材、オーガニックコットンなど。

 

■今後の目標を聞かせてください。
どこまでも完成のない仕事だと思うので、一歩一歩着実に、急がぬように止まらぬように歩んでいきたいと思っています。

■今後、コーディネーターになろうとしている人達へメッセージ(アドバイス)をお願いします。
日々の自分の生活体験がすべてICとしての知識であり経験となります。毎日の生活を大切にしてぜひ夢を実現して下さい

 

取材を終えて

K様邸の設計はT設計事務所さん、施工はM建設さんでした。
Kさんは、T設計事務所さんが設計したお宅の完成パーティ等に参加するうちに県産材などの木をふんだんに使うところが気にいって、設計を依頼されました。
M建設さんも、材木商からスタートした会社だけあって、良質な木を提供してくれたそうです。
そして、その中に後藤さんがICとして加わって、設計士さんのカラーとKさんのカラーの調整役を担当。
そうすることで、Kさんのオリジナリティーが尊重された「自分らしい家」が完成したとのこと。
  
まさに、インテリアコーディネーターの鑑です。さすが後藤会長!(後藤さんは、IICAの会長さんでもあります)また、Kさんが家を建てるのは、今回が初めてで、何もかも分らないことばかり。
そんな時に、友人である後藤さんに、気軽に何でも相談することができて、とても心強かったそうです。
そして、Kさんの仕事や生活パターンをよく理解してくれているので、具体的な事を言わなくても、「こういう環境にしてほしい」と言うと、いろいろと提案してくれたのがうれしかった!とのこと。
「持つべきものは良い友達」 後藤さんとKさんが、声を揃えておっしゃったのがとても印象的な一夜でした。

 

御礼

取材にあたり、K邸の皆様にはこころよくご協力いただきました。誠にありがとうございます。
今後共ICの活動にご期待下さい。

*取材:掛野俊介、西村恵美子


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