能登の旅「珠洲見学会」リポート

能登の旅「珠洲見学会」リポート

去る7月22日、IICAメンバー11名が参加して、珠洲見学会に行ってきました。

この企画は、珠洲の人口減少を食い止めるべく地元の活性化に取り組まれているNPO法人「能登すずなり」とIICAとの出会いがきっかけで実現したもので、珠洲を知り尽くす「能登すずなり」スタッフお2人の案内で、市内各所を見て回りました。

金沢から能登有料道路を経由し、約2時間半。
 まず一行が訪れたのは、『珠洲焼資料館』。平安~室町時代にかけてこの地で盛んに生産されながら戦国時代に入り突如衰退し、「幻の古陶」ともいわれた珠洲焼の歴史を貴重な作品や資料とともに学びました。また、向かいにある『珠洲焼館』には、現代の珠洲焼作品が数多く展示販売されており、メンバーも手にとって品定め。素朴でありながら力強い美しさを持つ器たちは、料理や花を一層引き立ててくれそうなもの素敵なものばかりでした。

次は、珪藻土を使ったコンロを製造販売している『株式会社鍵主工業』へ。店内には、大人数でBBQが楽しめる角型からかわいい柄の入った小型七輪まで、大小様々の珪藻土コンロが並んでいました。

 そのほか私たちが注目したのは、内装壁材として使用できる珪藻土レンガ。奥にはそのレンガを使用したモデルルームがあり、中に入って感触を確かめながら、施工方法・価格などについても伺いました。塗りの珪藻土とはまた違った表情があり、住宅や店舗など様々な空間の内装材として新しい提案ができそうでした。

次に訪れた『櫻田酒造』では、威勢のよいご主人がユーモアを交えながら酒蔵を案内してくださいました。能登の震災にも耐えた古い酒蔵は、2階に上がると床がきしみ、歩くのが怖いほど。長年ここで酒造りをすることで蔵自体に麹菌が住み着き、それが酒を美味しくしてくれるのだそうです。この趣ある蔵を大切にすることが、能登の日本酒の味を守ることにもつながっているのだということを学びました。

続いては、古民家レストラン『典座』と珠洲焼工房『伏見窯』が併設した『珠洲織陶苑』へ。おまちかねのランチの前に、『珠洲焼館』にも作品が並んでいた珠洲焼作家・坂本市郎さんの工房と窯を覗かせていただきました。珠洲焼独特の黒は、薪を次々くべて1200℃以上で焼成することで生まれるのだとか。1週間前に火を落としたという窯はまだ熱気を帯びていました。

珠洲焼のできる現場を見学した後、古民家の中に入ると、広い座敷にお昼の準備が。楽しみにしていた岩牡蠣は、珠洲焼の器に乗って登場しました。普通の4倍ほどあるカキフライと焼き牡蠣に一同はびっくり。プリプリとした食感と口いっぱいに広がる磯の香りに大満足でした。イカのいしるを塗った焼きおにぎりや珠洲の郷土料理である枝豆のすりわり汁、大浜大豆から作られた豆腐など、どれも最高においしかったです。

 

お腹もすっかり満たされ、次に向かったのは『有限会社丸和工業』。ここでは、日本で唯一珪藻土切り出し七輪が作られています。通常の珪藻土粉末を練って成形してつくる七輪とは火持ちや断熱性が格段に違うのだそうです。天然の珪藻土の固まりを削って七輪にするというのは、東洋一の珪藻土埋蔵量を誇る珠洲だからこそできる製法。工場の入口には、全国各地の宛名が貼られた出荷直前の七輪がたくさん並んでいました。こうして、能登から本物の良品が全国に広まっていくのは、とても嬉しいものです。

珠洲焼、珪藻土、岩牡蠣や日本酒など能登の食材、古いものを大切にしていく気持ち・・・
今回の珠洲見学会で、奥能登・珠洲にあるたくさんの良いものを再発見することができました。“住まい”“暮らし”に関わるインテリアコーディネーターとして、自分の引き出しを増やすことにもつながったと思います。また今後、これらの良いものを私たちを通してさらに多くの人たちに伝えることで、珠洲の活性化のお手伝いができればと思いました。

お世話になった「能登すずなり」のスタッフの皆様、本当にありがとうございました。

文:松本有未  撮影:米谷薫 掛野俊介 松本有未

 Copyright(c) 2007 IICA  Ishikawa Interior Coordinator Association. All raights reserved.