金沢町家「フランス料理ネネグース」見学会リポート

金沢町家「フランス料理ネネグース」見学会リポート

去る6月6日、金沢市の金澤町家再生モデル事業の補助を受け、フランス料理店として生まれ変わった千日町の旧家の完成見学会が開催されました。
所は広小路から犀川大橋へ歩いて行き、派出所の手前を左へ曲がると室生犀星の実家「雨宝院」があります。
ただし一方通行なので、車でお越しの方は新橋の方から行かなければならないので事前に道を調べてからお越しください。

見学会ではこの建物改修に携わった設計士さんや、オーナーの方のお話が聞けました。
オーナーの梶谷さんは、元々新神田でフランス料理店を営んでいました。
そして、ある年齢を境に、金沢らしい場所で金沢らしいお店を持とうと思い、2,3年かけて町家を探していたそうです。
長町、東や西の茶屋街、主計町、といろいろ廻っていたある日、この千日町に一目惚れしたそうです。
室生犀星の犀川、千日町という名前の響きも気にいったそうです。
そして、金沢では町家を改修する時に助成金が貰えることを知り応募されたそうです。
初めこの建物の中は惨憺たるものだったそうです。
なんと駐車場側へ12cmも傾がっていたそうです。天井からの雨漏りもひどく、いたるところで木の腐食なども
あったそうです。
オーナーがこの建物に求めたものは、「あまりキレイにしすぎないでほしい」「冬の寒さ対策として、1,2階に
床暖房」「窓は2重サッシにしてほしい」などでした。
その要望に応えるべく設計を担当されたのは建築士の西川氏です。
なるべく壊さないでと施主から言われたが、壊さないと建物の補強や傾きを直せないという中で、施主に
「壊さないでと言ったのになぜそこまで壊すの?」と言われ、それを理解してもらうのに苦労されたそうです。
その中で、お客様の住みやすいよう、使いやすいよう、また施主の嗜好を取り入れる事に努力されたそうです。
時には施主と喧嘩しながら、また泣かせながらも進めていったそうです。
最初、玄関は40cm以上の段差があり、それをバリアフリーに近づけるため、床を一旦全部壊し、寒さ対策も施しながらまたフラットにしすぎようとすると、建具等に無理がくるため、束石も外して、土間コンクリートベタ打ちにされたそうです。
ですが、既存に合わせなければならないため、多少の床のかたがりはそのまま残っているそうです。
また、泥壁を残したかったので、通し柱部分なども泥壁を壊さないよう、慎重に施工し、1階は床をしっかりさせるため、ある程度壁を壊したが、2階はそのままなので、極端に言うと建物はくの字に曲がっているそうです。
昔の工法と今の工法は違うため、柱を追加したり、金物で補強したり、そして使える柱や建具はそのまま塗装だけ塗り替え、使用しているそうです。

そして最終的には金沢らしい町家の趣そのままに、フレンチテイストのレストランらしい上品で美しいお店になりました。
まさに、新古の相乗効果がもたらした結果だと思います。
犀川のせせらぎを大切に音楽をかけないお店ということで、自然の豊かさを満喫できるレストランだと思います.

今回この建物を見学できて本当に良かったと思いました。
ぜひ、この魅力的なお店に、皆様も一度足を運んでみてはいかがでしょうか?

文・撮影 掛野俊介

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